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「不軽菩薩の《毒鼓(どっく)の縁》」


(これ)()によつて(ろん)ぜば、(ほとけ)(めつ)()において三時(さんじ)あり。

正像(しょうぞう)二千余年(にせんよねん)にはなお()(しゅ)(もの)あり。

(れい)せば、在世(ざいせ)四十余年(よんじゅうよねん)のごとし。()(こん)()らずんば

左右(さう)()(じっ)(きょう)(あた)うべからず。

(いま)はすでに末法(まっぽう)に入つて在世(ざいせ)結縁(けちえん)(もの)漸々(ぜんぜん)

衰微(すいび)して(ごん)(じつ)二機(にき)(みな)ことごとく()きぬ。

かの不軽(ふきょう)菩薩(ぼさつ)末世(まっせ)出現(しゅつげん)して(どっ)()()たしむるの(とき)なり

 

(現代語訳)

以上の仏のご在世の時代のことから考えると、仏のご入滅後においても正法時・像法時・末法時の三時がある。

正法時と像法時の二千年の間は、仏のご在世の四十余年間(法華経説法以前)のように仏の種を下された者がいた。したがって機根を見分けないでむやみに真実の教えである法華経を説いてはならない。

ところが、今はすでに末法の時代に入っており、仏のご在世に法華経に縁を結んだ者はしだいに少なくなり、権教や実教の機根は、悉くいなくなってしまった。したがって、かの不軽菩薩が末法の世に出現して毒鼓(毒を塗った太鼓を打つと聞く者が死ぬように、聞く意思のない者にも強いて説き聞かせて煩悩を滅し仏の種を下す)を打ち、しいて法華経の仏種を下す時である。

(『曽谷入道殿許御書』より)

 

【盂蘭盆施餓鬼会のお話】


七月九日に奉行いたします「盂蘭盆施餓鬼会」という法要は、御先祖供養のための「盂蘭盆会」と、万霊供養のための「施餓鬼会」を一緒に行うものです。それぞれの法要の由来がことなりますので、次に説明していきます。

【当日の予定】
日にち7月9日(日)
会 場善龍寺 本堂
時 間午後1時半より 法話「つたえる心 つなぐ心」法妙寺副住職 神蔵寿観上人
午後2時半より 護持会総会・決算報告
午後3時より  盂蘭盆施餓鬼会 法要

 

1、盂蘭盆会―目連尊者とそのお母様の話

インドで教えを説かれたお釈迦さまには、十大弟子という十人の尊者がいます。その中のお一人、神通力第一といわれた目連尊者が、ある日その天眼通といわれる透視能力で、亡くなられたお母さまがどこにいらっしゃるかと世界中を見渡しました。すると、天上の世界にいるとばかり思っていたお母さまが、驚いたことに「餓鬼の世界」で苦しんでいるではありませんか。

お母さまは、「慳貪の罪」といって、我が子のみに愛情を注いて他の子を邪慳にした罪によって、なんと餓鬼道の世界に堕ちていたのです。

目連さまは神通力で、やせ細ったお母さまに食べ物を差し上げるのですが、お母さまが急いで食べようとするとその食べ物が火となって燃え上がったのです。あわてた目連さまが水をかけると、その水が油となってさらに燃え盛り、お母さまを苦しめました。泣きながら目連さまは、お釈迦さまに助けを求めました。

「目連、貴方のお母さまが餓鬼会に堕ちてしまったは、他の子供に冷たくして貴方だけを可愛がり、貴方に財産をのこすために施しさえも惜しんだため、知らぬ内に罪を作ってしまったからなのです。この罪はあなた一人の力では救えません。大勢のお坊さまの力が必要なのです。これから夏の修行(雨安居)が終わる七月十五日に多くの修行僧に供養の品を供えて読経してもらい、沢山の御馳走を振舞う事で、お母さまの罪は償われるでしょう」とお釈迦さまはおっしゃいました。

目連さまは、お釈迦さまの教えのとおりに、七月十五日に大勢の修行僧に供養をして、その功徳でお母さまを餓鬼界の苦しみから救う事が出来たのです。この由来から御先祖様を供養するお盆の行事が始まったと言われています。「盂蘭盆」という言葉は「ウランバナ」という梵語を音写した熟語ですが、意味は「逆さに吊るされた苦しみ」です。逆さに吊るすのは刑罰ですから、お盆には「私達が知らずに犯した罪を罰せられ、懺悔することで消してゆく」という罪障消滅の意味もあります。

日蓮聖人は『盂蘭盆御書』に「上七代、下七代、上無量生、下無量生の父母が成仏する」と述べられています。つまり、お盆には「ご先祖さま」だけでなく「未来の父母である子孫」の安泰を祈るという意義があります。お盆は、先祖から子孫にいたる間にいる私という「命のつながり」を自覚して感謝する時でもあるのです。

 

2、施餓鬼会―阿難尊者と焔口餓鬼の話

お施餓鬼の由来は、お釈迦さまの従兄弟で「多聞第一」といわれた阿難尊者の逸話にあります。阿難さまが修行に励んでいた時、口から火を吹く焔口餓鬼が現れて「おまえの命はあと三日だ」と告げたのです。阿難さまは驚いて「私はまだ修行が終わっていないのでどうにか寿命を延ばして欲しい」と応えますと、焔口餓鬼は「それならば、すべての餓鬼とすべてのバラモンにそれぞれ一石分(約百八十㍑)の食べ物を施せ」といいました。

阿難さまは困って、お釈迦さまに助けを求めますと、お釈迦さまは「加持飲食陀羅尼」という経文を唱えて、食べ物を持った一つの器にお加持すれば、全ての餓鬼とバラモンに七十七石分の食べ物を施したことになる、ト教えました。阿難さまがその通りに施食の法要を営むと、寿命が延びて無事に修行を終えられた、というお話です

ご先祖さまの供養と万霊への供養を共に営む「盂蘭盆施餓鬼会」は、生れて生きて生かされている自分を見つめ、感謝する報恩の行事です。

 

【新盆を迎える方へ】

今年のお盆に「新盆」を迎える方は、図を参考にして「新盆用のお供米袋」をつくって、7月9日の御法要にお持ち下さい。